「ティンバライズ展」 
 —都市木造のフロンティア in 北海道
木育カフェ(2011春)報告
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木育カフェ(2011春)
森林ジャーナリスト・田中淳夫さんとの懇談会

5月10日(火)夕方から、北海道大学の遠友学舎で今年度1回目の木育カフェを行いました。ゲストは、自称「夢見る森林ジャーナリスト」の田中淳夫さんです。

田中さん(左)と西川さん

田中さんは、全国各地の森林や林業現場での精力的な取材を通して得た最新の林業状況について、4月に平凡社新書より『森林異変-日本の林業に未来はあるか』を出版されたばかり。 他のお仕事で来られたのですが、ルポライター西川さん(木育ファミリー運営委員)の呼びかけで木育カフェにお迎えしました。
新緑の中に桜が咲く北大の美しい風景を観ながらお話を聞きたかったのですが、札幌の桜はまだツボミが多く肌寒いお天気。平日の夜にもかかわらず、参加者は約30人。木材、森林行政、建築、木工、子育て生活、森林学科生など、幅広いジャンルの方が集まりました。

 

前半は、スライドを観ながら21世紀に入って激震が走り始めた日本の森の現場で何が起きているのか、そして政策はいかに変わったか。そこにいたる日本の戦後林業の移りかわりと、最近の話題となっている「外資が森林を購入する疑問」「林業界の新たな課題」などについてリアルなお話が聞けました。

 

印象に残ったのは、最近刊のなかでも詳しく述べられている「大林業」の考え方。林業を森と木に関わるトータルな世界としてとらえ、木材生産(川中)を健全にすすめるためには、森づくり(川上)と街づくり(川下)をしっかりとつなぎ直す必要があるとのこと。そして森林の大切さや林業の重要性を理解するためには知識を超えた感覚や記憶が必要で、そのためのキーワードが「美しい森」。こどもの頃から木や森と触れあって、森を美しいと感じ大切に思う感性を育むのが、木育の使命なのだと思いました。

 

後半は、椅子をぐるっと輪型に並べかえて、参加者からの質問に答えるトーク・タイム。いろいろな話題がでましたが、興味深かったのは「薪ストーブとペレットストーブ」について。関西圏では「平日はペレットで、休日は薪の併用」というスタイルがあるそうです。暖房として薪を使いたいけれどペレットの利便性も捨てがたいので、薪を燃やして炎を観ることは食事でいえばデザート(スイーツ)のようなものとして楽しんでいるそう。そして、そのための高級薪の需要があること。また生産過程で多くのエネルギーを使うペレットと、薪の確保の工夫をした場合の環境負荷の違いなど、さまざまな角度から森や木と人の関わりについて話が広がりました。

北大の遠友学舎

午後9時頃に木育カフェは無事に終わり、屋外に出ると冷たい小雨が降っていました。
おなじ空の下、3月の震災で被災された方たちにとって、いま「心のデザート」になるものは何なのだろう・・・と考えました。


◆田中淳夫さんのHPとブログ
http://homepage2.nifty.com/tankenka/chosha.html
http://ikoma.cocolog-nifty.com/moritoinaka/