木育カフェ(2011秋)
復元させた「弥生時代の琴」の音色を聴く会の報告
10月29日(土)に北海道大学・学術交流文化会館にて「木育カフェ」を開催しました。
ゲストは、荒山千恵さん(北海道大学大学院文学研究科・専門研究員、考古学)。参加者は30数名で、木育ファミリー会員以外にも、北大や北海道教育大の学生さんが多数来場され盛況でした。
荒山さんは考古学の中でも、古代の音に関する研究をされており、弥生時代の遺跡から出土された木製の琴について調べておられます。昨年(2010年)、静岡県の遺跡から出土された琴を基に、荒山さんが監修して木工作家の片岡祥光さん(北海道置戸町在住)が復元製作しました。
今回の木育カフェでは、復元させた1タイプの琴の音色を聴き比べてみました。古代の琴は、現在よく弾かれている13絃の「筝(そう)」ではなく、和琴(わごん)と呼ばれる5〜6弦のタイプです。全国各地の遺跡から100近い和琴が出土されており(北海道の出土例はなし)、古墳時代の埴輪の中には「琴を弾く男子」の像もあります。
復元琴は以下の2タイプ。静岡県産の樹齢数百年のスギ材を使用。現在、琴の材はほとんどがキリですが、古代はスギやヒノキが主でした。
1タイプ:登呂遺跡(静岡市)出土の「槽作りの琴」
2タイプ:小黒遺跡(静岡市)出土の「板作りの琴」
*絃は木綿糸と絹糸。古代には動物の皮や毛も使用したと推測できる。
音色は槽作りのほうが、箱型のため音が共鳴しやすく、板作りに比べて響きます。古代では音階という概念がなかったようで、神事の際にボロンと音を出した程度だったと推測されています。この点については今後の研究課題で、そのために古代の琴を復元させたとのこと。
製作面では、板をきっちりと組み合わせた仕口の技術が施されていました。弥生時代から刃物を使った木工の技術があったことが、琴だけを見てもわかります。柾目と板目も使い分けていたと思われます。 小さな木製和琴が、「人は太古の昔から木と共に暮らしてきた」ということを現実のものとしてイメージさせてくれるのでした。
木育カフェの後半はお茶会です。メニューは、網走郡津別町にある「石釜パン工房 アエプ」のパン3種とコーヒーでした。薪を使って昔ながらの石釜で焼き上げる素朴な味わいの自然派パンを木の器で楽しみました。津別産の小麦を使ったパンに、遠軽産シナノキの蜂蜜をぬって、オホーツク産の木の器で・・・古代の木の音に聴覚を刺激された後のおいしい時間でした。
「木育って、素敵だな」と実感しました。
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